and all healthy instinct for it.


昇り詰める緊張から解き放たれた心地よい気だるさは、長く続かなかった。
「あっ」
不意に濡れた指で奥に触れられ、三橋は思わず合わせていた唇を離した。
入り口に触れられていたのはほんの一瞬で、そこから一気に中へ潜り込まれ、三橋はその異質な感覚に大きく身を震わせた。
縋るものが欲しくて押さえられていない方の手で阿部の腕を掴み、耐えるように固く目を瞑った。
「や・・・っ」
自分でも触れない処へ触れられた羞恥が思考を空回りさせる。また熱が、躯の中心に生まれるのが分かった。
そして新たな熱は中の指先が触れる内壁と頭の中とを忙しなく行き来するように、三橋の神経を掻き回した。指の動きと呼応するように。
「い やっ、あべ くっ・・・」
触れられている処から融けそうでどうにかなりそうで、そこから全てを崩されそうで。
中を愛撫される感覚は慣れるに連れ甘さを伴ってきたが、それは何か未知の不安に満ちていて、訳も無く怖かった。
三橋は睫を震わせながら薄く目を開き、懇願するように阿部を見上げた。
お互いの視線は交わるのを躊躇い、彷徨いながらも、やがて絡まりひとつになった。
三橋は阿部の瞳を覗き込むと何度かゆっくりと瞬きをした。そして少し震えながらも首を起こして
そっと自ら唇を合わせた。
三橋は腕に縋っていた片手を離し、確かに触れ合えるように阿部の髪へその指を滑り込ませた。
微かに震える唇で宥められるように柔らかく食まれ、阿部は唇へ不意に訪れたその感触に胸が詰まりそうになって、焦りながら唇を離した。
「な」
さっきまであんなに身を固くしていたのに、それがまるで嘘のような優しい感触が、信じられなかった。
戸惑う阿部に、三橋は整わない息の下でゆっくりと言葉を紡いだ。
「あ あやまんない、で・・・」
「あやま、る?・・・あ、さっき」
『ごめんな』と言った事かと問おうとすると、三橋は小さく頭を振った。
「まだ今も、カオが ゆってる」
羞恥よりも快感よりも恐れよりも、自分の感覚や感情より、今はその表情が意識の全てを占めていて
阿部にあんな顔をさせたままでいる事は、出来ないと思った。
そして三橋は自分の額を阿部の首に押し付けた。顔を見て上手く話せる自信が、全然無かったから。
「オレに、し したいっ・・・なら、オレも され、たい」

触りたいのなら何処を触ってくれてもいい、こうしていられるのなら何をされてもいい

そう、もっとちゃんと伝えたかったけど、片言を絞り出し囁くのが精一杯だった。
阿部の喉の動きが、三橋の前髪を微かに揺らした。
「みはし、」
「・・・ん」
「好きだ」
「うん」
「好き だ」
「う、ん っ・・・」
静かに泣き出した三橋の背を、押さえていた手を解いて阿部はゆっくりと撫ぜた。下手をすると自分も泣きそうだった。
自分の欲を押し付けるような形になってしまって、罪悪感で縛られていたのを、三橋は開放してくれた。
それでもまだ迷いは澱のように、阿部のみぞおち辺りに蟠っていた。
「・・・こんな風にしか出来ねーで、そんでも」
いいのか、との言葉を遮るように三橋は口を開いた。
「こうするしか ないなら」

そうしてほしい

との言葉はまた、阿部の唇にそっと溶けて消えた。


***** **
つかの間の微睡は、メールのマナーモードでアッサリと破られた。
阿部は半分寝ぼけながらも慌てて尻ポケットから携帯を弄り出し、ブルブルと遠慮無しに震えるそこに表示されている時刻を暫くボーッと眺め
そして、一気に覚醒して思わず叫んだ。
「ウソだろーーーっ!?」
確か今日の練習はいつもよりも2時間は早く上がった筈だった。なのに、なんつー時間。いつもの帰宅時間を軽く越えている。
何故、部室なんかで眠り込んだ? と考える前に、隣で丸くなり眠っている三橋の姿を目にし、全てを思い出す。自然と顔が赤面するのが分かった。
「ぁあ、ぁぁあ・・・」
ガックリと畳に両手を付く代わりに、阿部は額に手を遣った。
後悔と憔悴とそして全身の甘ったるい気だるさと幸福感が複雑に入り混じり、思考が全く纏まらない。
はぁーーー・・・
と大きく溜息を吐くと、阿部は観念した表情で恐る恐る三橋を見遣った。
三橋は阿部の叫びにも目を覚ます気配は無く、ぐっすりと眠り込んでいた。高校生だとはとても思えない寝顔だ。
そして自分の腕の中にいた時の表情を思い返し、その差に打ちのめされ、阿部は今度こそガックリと畳に額を押し付けた。
あまりのダメージに起き上がれそうにない。
しかし、落ち込んで(反芻して)いる時間はそう無かった。メールの内容は見ていないが、100発100中、母親からの電撃に違いない。
三橋のおばさんも心配してるに違いないと、阿部は無理矢理半身を起こして三橋の肩に手を掛けた。
が、その身体を揺する事は出来なかった。そのまま三橋の傍らに寄り添い、阿部は静かに目を閉じてみた。
こんなに穏やかな三橋の呼吸と心音を、間近で聞くのは初めてだった。規則正しい呼吸音と心地よい体温が全身に伝わる。

このまま眠れればいいのにと、柄にも無く感傷的に阿部は思った。


【End】

11/07/07
***** **
 生きることは恋に似ている。全ての理性がそれに反し、
 全ての健全な本能がそれに賛同する
 Samuel Butler




自分の振り作にはまだまだ文章に迷いがあるようです。ぺこえさんに、某み●さんみたくズバッ!と指摘されました(涙。う、おおぉおおぉぉぉぉおおぉ・・・・・・・・・っ!!(悶叫泣逃)


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