西浦高校野球部の事件簿 第九話 


※時事ネタ入ってます。会話読んで分からない方はスルー推奨。縛り入ってごめんなさいですー。


「阿部も三橋にやってやれよー、アレ」
「アレって」
「ほらー、TVとか新聞とかでやってたじゃん!」
「魔法のキス☆」
 うっひょーーー! どよめくその場の一同。
「緊張避け」
「弾避けみてーだな。シールドアイテム?」
「三橋はマウンドじゃーんな緊張しねーから、いらねーよ」
「(緊張さしてる本人が言ってちゃ世話ないよね・・・)」
「いやー、わっかんねーぞ?これからオレらもガンガン勝ち進む訳だし」
「三橋のほっぺに魔の刻印が・・・。フミキ、ゼッターイハンt」
 ふぎゃああああああああああああぁぁぁあぁあぁ・・・! 言い終わらぬうちに阿部の手によってマットに沈む水谷。
「あべ、ひっどいぃぃぃ・・・」
「うっせ」
「でもよ、三橋の度胸付けにいいかもしんねーな」
「ど、どきょ う?」
「あー、何か分かるソレ。バンジージャンプやると経験値上がるんだよな」
「(どこのシレンですk)」
「ラリる感じ?クスリっぽくね?」
「まぁ脳内麻薬っぽいっちゃーぽいよな」
「阿部が怖くなくなるかも、ね?」
「おもろそー!一発やってみ?キモタマでかくなれっぞ!」
「(((キン●マって誤爆するかと思った・・・)))」
「う、うひっ!?」
 やんややんやー☆ 変な盛り上がりを見せるチームメイトたち。ノリノリである。
「される身にもなってやれよお前ら」
「する身にもなってほしいんだが?」
「あ、阿部くん は ヤだ・・・?」


突如、三橋が真顔で訊いてきたので、阿部はその表情を見て一瞬フリーズした。
「やだ って」
おま、何アホ言ってんだ!?との罵声もうめぼしの構えも無く、呆然とした阿部の姿は日常生活の中では非常に珍しい。
「お おおお オレなんか、に するの ヤ なんでしょ?」
両手をぎゅっと握りこみ、三橋は上目遣いに阿部を見据えた。傍から見れば睨み付けているように見え、非常に珍しいというかレアな光景だ。
「ヤ って、フツーはやんねーだろーが!」
異様な空気に気付き、それに飲まれまいと声を何とか荒げる阿部。攻撃色が強くなったのを感知し、すぐさま田島のフォローが入った。
「あいつらフツーにやってたじゃーん、マウンドで」
いつもなら外野からの突っ込みにも即切り返すのにスルー、阿部に余裕が無い。バッテリー間を今支配しているのは、西部劇の向かい合うガンマンが銃を抜く前の、あの空気だ。
「・・・やっぱ、ヤ なんだ」
「んなことねーって!!」
力なく銃を下ろした三橋に条件反射で阿部はそう叫び、殆ど同時にアリエナイといった顔をした。オレの銃、暴発?!みたいな。
「おー、言い切った!流石!」
「言ったからには、やれよ?」
「何もそこまで」
「頑張れ三橋!」
「阿部、も・・・」
「(やっちゃうの?つか、出来るの?)」
「ムリしなくていいからな、三橋」
「み、みはしぃいいい!にげてぇええぇえ!!!・・・って、みんななんでそんな落ち着いてんの?ねぇ?!」
「オレ、もっとマウンド で、堂々とした い」
悲喜交交に騒ぐチームメイトを静まらせたのは、三橋の悲壮とも言える決意に漲った言葉だった。
「その為だったら、どんなことでも する、よ」
「・・・分かった」
厳かに答える阿部。二人の間に春の風が通り過ぎて、その後を桜の花びらがはらはらと追った。


「やるぞ」
「ど、どどどど どう、ぞ!」
目をぎゅっと瞑る三橋の横に立ち、阿部はその肩に両手を掛けた。


* **
 三橋の頬に口押し付けりゃいいだけだろ?んな緊張すっこともねーじゃん?
 ちっせー頃なら母親とかにもしてたしされてたし下手こきゃシュンにもしてたか?うっわありえねぇ
 親父にはしてねーよな?いやいやいやいや間違ってもする訳ねぇ想像もしたくねぇえぇぇぇえ!
 しかしあのバッテリーすげージンクス持っちゃったんだな・・・オレらは気を付けよう
 つか、ここでやっちゃ同じジンクス持ちになっちゃわね?それってまずくね?9回裏毎にコレはありえねーだろいたたまれねぇ
 あーでも三橋マジでヤじゃねーのかよ?阿部君やっぱりムリイヤやめてとか言わない訳?・・・もしもーし?オニーサーン?
 ・・・だめだ、石化してる目ぇ開ける気配がまるでないまるで地蔵のようだオレがチューすりゃ溶けるんだろうか?
 って、何の童話ですか?!あ、メデューサに白雪姫って神話と童話か助けてペルセウス!!!
 あああああ自分突っ込みしてどーするよオレ!こんなんさっさと済ませて早く三橋に応えてやらねーt
 (以下略)


* **
(阿部の脳内終了)
そしてリアル時間は数分過ぎ。
待ってられないメンバーは蝶を追いかけたりボール投げしたりと騒がしく、固唾を飲んで二人を見守っているメンバーは、まぁ残りの想定内の奴らだ。
「って、こんなとこでっやってられっかぁぁぁあああぁああぁぁあああぁあほんだらぁ!」
総員退避!
事態が把握できてない三橋を素早く被爆地から避難させる巣山と花井。周りでふざけてた田島と水谷も何事かと急いで戻ってきた。
キレながら地面に崩れ落ちるそんな阿部に泉は音も無く忍び寄り、耳元に囁いた。
「・・・今日は何の日?フッフー♪」
「あ”?」
ゆっくり顔を上げた阿部の目に映るのは、ポカーンとしている三橋と@1名、それ以外の面子はというと表情は様々(にやにや・気の毒そう・納得・青ざめ・トイレ!・笑い堪え・爆笑)、で。
事情を飲み込んだ阿部はぶるぶるしながら再び地面に額を付けると、突如バネ仕掛けのように飛び上がり水谷に襲い掛かった。
「しっっっ   ・・・っねぇええええぇえええーーーっ!!!!!」
「ひ!?な、なんでオレなのおおぉぉおおぉおおーーーっ!?」
キャー!とけたたましい悲鳴を上げて顔面蒼白で逃げる水谷を憤怒の形相で追いかける阿部。計り知れない怖さの鬼ごっこである。
「・・・人間って逆上すると、一番当たり易い奴にいっちゃうもんなんだねぇ」
「水谷混ぜなくて正解だったなー、混じってたら半殺しだわ」
しみじみと呟く西広に花井は神妙に頷きながら相槌を打ち、その横で栄口はハラを押さえていた。
「お、オレ トイレ・・・」
「水谷、か可哀想じゃない?」
「やー、これで脚力付くんじゃね?めでたしめでたしっと」
同情の眼差しで激走している二人を見詰める沖に、泉はしれっと言ってのけた。そんな泉に片手で突っ込む巣山。
「そんなめでたいオチか?」
「三橋ー、おつかれ!」
「う、うん?」
田島ににぱっと笑い掛けられ釣られて笑いながらも、今日は何の日だったのかと疑問に思う三橋へ、桜もさわさわと風に揺られ笑い掛けた。


【完】

04/02/08
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全然間に合ってないが、清清しいぜ・・・(自分だけg)。いあ、元ネタ分かんない人にはスイマセンなんですが!せめて四月馬鹿蚊帳外トリオを/comfortして下さい^




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