コップには、まだ半分水が入っていた。
もう一度飲ませてみようと阿部は三橋の口元にコップを持っていきかけたが、この口の開き具合では同じ結果になりそうであった。
「そだ、冷凍庫に氷あったよな」
部屋に着いた時、西広が仕込んでいたのを思い出したのだ。
三橋の頭をそっと座布団に置くと、阿部は冷凍庫へ向かい氷皿を取り出した。空のコップに割り出した氷を数個入れて、三橋の元に戻る。
水の入ったコップに小さめの氷を一個落としてから取り出し、三橋の口に入れてやった。
余りの氷はハンドタオルに包んで三橋の頭に乗せた。
「取り合えずは、こんでいーか」
口内と額を冷やされて、三橋の寝顔は心なしか先程よりも気持ち良さそうに見える。
「・・・いい気なもんだぜ」
阿部はその頬をつまんでやりたい衝動に駆られたが、折角口に入れた氷が飛び出しては面倒なので止めた。
ふと、三橋の足の方へ目を向けると裾が捲れて片足が見えているのに気付き、阿部はその裾を直そうとした。
が、ある事を思い出し、その手が止まった。
「げっ」
一気に汗が噴出し、阿部の浴衣の背が湿り気を帯びる。
『し 下着、穿かせてねぇえぇえええええええええ!!』
目覚めてから三橋に穿いてないと騒がれるのはマズイ。色々めんどくさい。つーか、居た堪れな過ぎる。
慌てて三橋の風呂セットを弄り、阿部は新しい下着を取り出した。
それを穿かそうと片足づつ足首に通して、また阿部の手は止まった。
何故、脱衣所で穿かせられなかったのかを思い出したのだ。阿部の首がガクッと落ちる。
無心万歳・・・!

 上に進むしかないが、さて、どう進ませるか?それが問題だ

足首に通した下着を手に掛け、深く逡巡している阿部の耳には、部屋の扉が開いた音も上がりこむ音も聞こえなかった。
「あ、あべぇ!?な、なにしてんの!」
「な・・・!?」「うぉ!?」
突然降ってきた声の衝撃で現実に引き戻され、その方向へ顔を向けると、障子の前で第一声の水谷と田島が立ち竦くんでいた。
水谷と田島の表情から、今、自分が置かれている状況を客観的に分析して、その結果に阿部は血の気が引いた。
「三橋のパンツ脱がしてんのか!?」「い、いや、よくわかんないよ」
わたわたと水谷に質問する田島に、おたおたと答える水谷。
「なんで脱がそうとしてんの?」「う、いや、よくわかんないんだけど」
わたわたおたおた。
「脱がして何かするつもりなの?」「え、いや、よくわかんな」
わたわたおたおた。
漫才のような遣り取りに、遂に阿部が切れた。
「脱がしてんじゃねぇ!穿かせてんだよ!!」
わたわたおたおたをピタリと止めて、田島と水谷は阿部の方を向いた。
「「なんで?」」
「う」
ハモる二人に詰まる阿部。部屋は空調が入って涼しいのに、ヘンな汗が出てきて背中が気持ち悪い。
「戸口で何やってんだ、邪魔だろー」
田島が花井の声に振り返り、口を開こうとした瞬間、阿部は田島の背後に立っていた。
この間0.3秒(体感)。特撮も真っ青な脅威のスピードである。
水谷は寝かされている三橋と阿部をはわはわと見比べて、首振りに忙しい。田島も背後の殺気に凍りついたままだ。
「・・・花井、三橋の世話 頼む」
「はぁ?な」
んでだよ?という花井の質問は、阿部の手の中の携帯に映っている画像で封殺された。自筆【百枝梓】。
タオルを肩に掛け、スタスタと部屋を出て行く阿部の後姿を、三人で呆然と見送るしかなかった。

* **
その後の花井の奮闘は、ご想像にお任せしたい。
阿部は水風呂とサウナを往復し、深夜まで部屋に戻らなかったとか。

【完】

08/05/07
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ごめんなー☆(何回目だy)。一番に浮かんだオチがコレで死た。キャスト変えたかったのですが殴り愛→NG!→同一オチに。どんだけヘンタイに見えるのか障子から見たい。


→第一話 【暇潰し編】



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